愛犬が体を痒そうにしていたり、皮膚に赤みがある場合、それは皮膚炎を起こしているのかもしれません。
犬の皮膚炎は皮膚病によって引き起こされますが、皮膚病と言ってもさまざまです。
皮膚病に応じた適切な治し方をしなければ、皮膚炎は悪化してしまい、いつまで経っても痒みが治まらないということにもなりかねません。
そこで今回は、犬の皮膚炎の原因となる皮膚病の種類や治し方についてご紹介します。
そもそも犬の皮膚炎の症状は?
犬の皮膚炎の症状は、痒みや皮膚が赤くなることが挙げられます。
犬の皮膚は人間の皮膚と比べて1/4~1/5程度しかないため、皮膚トラブルはとても多いです。
しかし、皮膚が赤くなったからと言って、必ずしも皮膚炎とは限らないため注意しましょう。
皮膚炎は、炎症が起きて血管が拡張したことで、皮膚の下を通る血液の量が増えたことで皮膚が赤くなりますが、血管から血液が漏れ出して出血している場合もあり、自己判断は危険です。
治し方も異なるため、愛犬の皮膚が赤くなっていたら皮膚炎と決めつけず、必ず動物病院を受診してください。
では、皮膚炎の原因となる皮膚病にはどんなものがあるのでしょうか。
犬の皮膚病にはさまざまな種類がありますが、次章から皮膚炎の原因となる皮膚病と治し方についてご紹介します。
皮膚炎の原因となる皮膚病①膿皮症(細菌性皮膚炎)
膿皮症は、皮膚のバリア機能が低下することで感染が起こり発症する皮膚病です。
膿皮症のほとんどは、犬の皮膚に常在するブドウ球菌が何らかの原因で過剰に増えることで引き起こされます。
その他の原因菌としては、大腸菌やシュードモナス菌、プロテウス菌などもあります。
■犬の膿皮症の主な症状
・皮膚の赤み
・赤い発疹
・痒み
・白っぽいかさぶた
・脱毛
アレルギー性皮膚炎などの持病がある犬では、再発しやすいので注意が必要です。
また、膿皮症を引き起こす原因はさまざまで、主に免疫力の低下が挙げられますが、過剰なシャンプーやブラッシング、合わないシャンプー剤の使用、シャンプー不足、ドライヤーの長時間使用なども原因となるため注意しましょう。
犬の膿皮症(細菌性皮膚炎)のタイプは3つ
- 表面性膿皮症
…皮膚の表面だけで細菌が繁殖。皮膚が赤くなる軽度の皮膚炎 - 表在性(浅在性)膿皮症
…皮膚の表皮と毛包に症状が見られる皮膚炎 - 深在性膿皮症
…皮膚の奥にある真皮と皮下組織に起こる皮膚炎。通常、表在性膿皮症が悪化することで起こる
表面性膿皮症であれば治し方も難しくないため、悪化させる前に治療してあげましょう。
また、膿皮症の原因となる菌は常在菌のため、ほかの犬や人に感染することはありません。
犬の膿皮症の治し方
表面性膿皮症のように軽度の皮膚病であれば、治し方は抗菌シャンプーや痒み止の塗り薬だけということが多いでしょう。
しかし、表在性(浅在性)膿皮症や深在性膿皮症の治し方になると、抗菌シャンプーだけでなく程度によっては抗菌薬(抗生物質)の内服や、痒み止めの内服や塗り薬が出されることもあります。
シャンプーは週に1~2回必要になり、症状に合わせて全身や患部のみといった指示が獣医師から出されるため、指示に従って行ってください。
また、シャンプーだけでは皮膚を乾燥させてしまい治りも悪いため、保湿剤を併用することをおすすめします。
皮膚炎の原因となる皮膚病②皮膚糸状菌症(真菌症)
皮膚糸状菌症は、犬の皮膚や被毛、爪に糸状菌(カビの仲間)が感染して増えることで発症する皮膚病です。
皮膚のバリア機能が低下したときに皮膚に入り込み、感染します。
一般的には免疫が低下している犬や、高齢犬、免疫が弱い子犬などが感染しやすいです。
■犬の皮膚糸状菌症の主な症状
・皮膚の赤み
・痒み
・フケ
・脱毛(円形が多い)
また、皮膚糸状菌症に感染している動物と接触することでも感染するため、多頭飼いの犬の場合は注意が必要です。
皮膚糸状真菌症は人獣共通感染症の皮膚病
皮膚糸状真菌症は、ほかの動物から感染する・させるだけでなく、人間も感染する・させる人獣共通感染症です。
水虫がある飼い主さんは、水虫のある手や足で愛犬を触らないようにする必要があります。
犬の皮膚糸状真菌症の治し方
皮膚糸状真菌症の治し方は、抗真菌薬の内服と抗菌シャンプーによる1週間に1回程度の全身のシャンプーが必要になります。
場合によっては洗いやすくしたり蒸れにくくするために被毛をバリカンで短く刈ることもあります。
皮膚炎の原因となる皮膚病③マラセチア性皮膚炎
マラセチアはもともと犬の皮膚に常在している真菌ですが、何らかの原因でマラセチアが過剰に増えるとマラセチア性皮膚炎を発症します。
■犬のマラセチア性皮膚炎の主な症状
・皮膚の赤み
・皮膚のベタつき
・フケが出る
・体が臭い
・皮膚が黒くなる
マラセチア性皮膚炎は高温多湿の季節に悪化しやすいとされています。
マラセチア性皮膚炎は、生まれつき皮脂の分泌が多い犬がなりやすいほか、アレルギー性皮膚炎、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などの内分泌疾患などの犬もなりやすい皮膚病です。
犬のマラセチア性皮膚炎が起きやすい部位
・耳介の内側、口唇、首、わき、指の間、爪の周囲、腹部、太ももの内側、陰部周囲など
また、パグやフレンチブルドッグなど、顔にヒダが多い犬ではヒダの間にマラセチア性皮膚炎が発症することもあるので、注意しましょう。
マラセチアは宿主特性が高くほかの犬に感染することはないほか、人間の皮膚病のマラセチア症とは菌の種類が違うため、人間に感染することはありません。
犬のマラセチア性皮膚炎の治し方
犬のマラセチア性皮膚炎の治し方は、抗真菌薬の内服と、1週間に2回の専用シャンプーがおおよそ3週間必要になります。
また、治し方がシャンプーではなく、塗り薬ということもあり、症状が全身なのか局所的なのかで異なります。
動物病院によって治し方は異なり、内服薬ではなくステロイドの外用薬を使用することもありますよ!
皮膚炎の原因となる皮膚病④アレルギー性皮膚炎
犬のアレルギー性皮膚炎は、免疫の過剰反応によってアレルギー反応を起こし、さまざまな症状を引き起こす皮膚病です。
犬の主なアレルギー性皮膚炎は、「アトピー性皮膚炎」「食物アレルギー」の2つに分類されます。
とは言え、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーは併発していることも多いため、厳密に区別されないこともあります。
■アレルギー性皮膚炎の主な症状
・耳、目の周り、口の周り、脇の下や後肢のつけ根の皮膚の赤み
・痒み
・結膜炎(炎症が強い場合)
アレルギーの原因となる物質は犬によって異なりますが、アレルゲンとなるのは花粉やハウスダスト、ノミ、ダニ、カビ、フケ、食べ物に含まれるタンパク質などが一般的です。
治し方をちゃんとしているのになかなか皮膚病が治らないといった場合は、何らかのアレルギーによってアレルギー性皮膚炎を発症している可能性もあるのでかかりつけの獣医師に相談してみましょう。
アレルギー性皮膚炎の治し方
アレルギー性皮膚炎の治し方は、主に3つの治し方を基本に考えていきます。
■アレルギー性皮膚炎の治し方
①アレルゲンを避ける
②週に1~2回のシャンプー
③内服薬
アレルギー性皮膚炎の治し方では、できる限り薬を少なく、症状をコントロールすることが重要です。
アレルゲンとなる原因物質を特定して避けるのはもちろん、保湿効果や皮膚炎を抑える効果のある専用のシャンプーで皮膚についているアレルゲンを落とし、保湿剤やリンスで皮膚のバリア機能を高めることが治し方の根本となります。
また、内服薬は1日3回以上必要になることも多いため、しっかり飲んでもらうようにしましょう。
皮膚炎の原因となる皮膚病⑤犬ニキビダニ症
犬ニキビダニ症は、何らかの原因でニキビダニが過剰に増えて皮膚炎を起こす皮膚病です。
ニキビダニは常に皮膚に存在しており、通常は毛穴の中でひっそりと生活していますが、免疫が低下していたり、内分泌疾患がある場合に大量に増えてしまことがあります。
■犬ニキビダニ症の主な症状
・皮膚の赤み
・皮膚の腫れ
・痒み
・毛穴が黒ずむ
・脱毛
犬ニキビダニ症は、局所的に症状が現れる局所性と広範囲に症状が現れる全身性の2つのタイプがあります。
ちなみに、犬から人間へは感染しないとされているほか、人間の皮膚にもタイプの異なるニキビダニは存在していますよ!
犬ニキビダニ症の治し方
犬ニキビダニ症の治し方は、ノミ・マダニ駆虫薬の内服と痒み止めの内服、シャンプーです。
毛包の洗浄効果のあるシャンプーを使用して、皮膚のケアをしていきます。
マイクロバブルを用いた治し方も治療効果が期待できるため、治し方は獣医師とよく相談して決めましょう。
犬の皮膚炎・皮膚病の治し方で注意すること
犬の皮膚炎の原因となる皮膚病ごとに治し方や使用する薬剤は異なりますが、皮膚病は薬浴(シャンプー)となることがほとんどです。
シャンプーは飼い主さんが自宅で行うことになりますが、シャンプーの洗い残しがあったり半乾きのままにすると、症状を悪化させてしまうだけでなく別の皮膚病を発症させてしまう可能性があります。
自宅でシャンプーする際は、しっかり洗い流すのはもちろん、しっかり乾かすようにしてください。
また、お湯の温度やドライヤーの熱風にも配慮が必要で、温かすぎると痒みが増してかきむしり、症状の悪化や二次感染などを起こしてしまう可能性が高まります。
36度くらいのぬるめのお湯で、ドライヤーも30ⅽm以上離すか送風にして乾かしましょう。
皮膚病の種類によってはドライヤーの使用自体が禁止のこともあるため、獣医師に確認してください。
犬の皮膚炎を起こす皮膚病はたくさん!早めの治療と予防をしよう
今回は、犬の皮膚炎を起こす皮膚病の種類と治し方についてご紹介しました。
犬の皮膚炎を起こす皮膚病のほとんどが、免疫の低下により引き起こされるものです。
皮膚炎になったときは動物病院で原因となる皮膚病の治療をするのはもちろん、免疫を下げないようにバランスの良い食事や適度な運動、室内の温度管理など、飼育環境を整えてあげましょう。
また、皮膚病によって治し方は異なり、誤った治し方は犬の皮膚炎を長引かせてしまうことになります。
痒みが続くのは見ているほうも当の犬もとてもつらいものなので、必ず獣医師の指示に従い、適切な治し方をしてあげてくださいね。
参考文献
- くるり動物病院にとな「犬の膿皮症|症状や原因、治療法について獣医師が解説」
- なんよう動物病院「犬のマラセチア皮膚炎の原因と対処法について」
- はらのまち動物病院「犬のアレルギー性皮膚炎」
- NIH「Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (3):prevalence of cutaneous adverse food reactions in dogs and cats」
- オリバ犬猫病院「犬猫の真菌症(皮膚糸状菌症)の症状と原因、治療法について|獣医師が解説」
- なんよう動物病院 犬猫スキンケアクリニック「犬ニキビダニ症ってどんな病気?」