愛犬が骨肉腫と診断された、もしくは骨肉腫の疑いがあり、どうしていいのか、これからどうなるのか不安になっているのではないでしょうか。
骨肉腫がわかったときには、すでに犬が痛みを感じていることも多く、早期に治療に取り組むことが大切です。
今回は、犬の骨肉腫の初期症状や末期症状を中心に、断脚しない選択はあるのかをご紹介します。
愛犬が骨肉腫を患ってしまった飼い主さんや、骨肉腫の症状について知っておきたい飼い主さんはぜひ参考にしてください。
犬の骨肉腫とは?骨にできる腫瘍
骨肉腫とは、骨から発生する悪性腫瘍の1つで、骨腫瘍全体の85~90%以上を占める非常に転移しやすい腫瘍です。
骨肉腫には骨自体から発生した「原発性腫瘍」と、ほかの身体の部位に発生した悪性腫瘍が骨に転移した「転移性腫瘍」があり、転移性の場合は複数個所に同時に多発します。
骨肉腫が発生した骨は非常に強い痛みを伴い、一般的な鎮痛薬では痛みを抑えることができないことから、第一選択は外科手術となります。
特に四肢に発生した場合では、病的骨折の可能性や痛みを取り除くといった目的で断脚手術となることが多いです。
また、骨肉腫と診断された時点で、90%以上の犬が目に見えないレベルで肺などに転移が起こっていることから、転移病巣の進行を遅らせる治療も同時に考える必要があります。
犬の骨肉腫ができる部位の約75%が四肢
骨肉腫と言うと四肢にできるイメージが強いですが、さまざまな場所に発生するため注意が必要です。
発生部位 | 割合(約) |
四肢 | 75% |
脊椎 | 15% |
頭蓋 | 14% |
肋骨 | 10% |
鼻・副鼻腔 | 9% |
骨盤 | 6% |
また、大型犬や超大型犬では四肢に発生しやすいですが、小型犬や中型犬では体幹の骨格(上表の四肢以外の部位)に発生する割合が高いとされています。
犬の骨肉腫の治療法の第一選択肢は骨の切除
犬の骨肉腫の治療法の第一選択は、手術によって腫瘍化した骨を切除する(断脚する)ことです。その後、補助の治療として抗がん剤が用いられるのが一般的です。
しかし、四肢以外に発生した場合では手術が難しいこともあり、その場合は放射線治療や内科治療、抗がん剤治療が行われます。
手術も放射線治療も難しい場合であっても、最低限痛みを軽減してあげるための治療は必要になります。
犬の骨肉腫の余命平均値は半年以内
気になるのは、骨肉腫になった場合の余命でしょう。
犬の骨肉腫の発生部位や状態によって異なりますが、四肢に発生した場合では1年生存率は12%程度となっています。
もちろん、完全切除できるような部位の骨肉腫(眼窩や頭蓋骨など)であれば、予後は比較的良好で長期生存も望めますが、ほとんどの場合は半年以内という平均値が出ています。
しかし、あくまでも平均値のため、あまり余命に捉われないようにしましょう。
犬の骨肉腫の主な5つの初期症状
では、犬の骨肉腫の初期症状はどのようなものが見られるのでしょうか。
犬の骨肉腫の主な5つの初期症状(一例)
・足をかばうような歩き方をする
・足を引きずる
・骨の部分が腫れたりしこりができる
・触ると痛がる
・足を痛そうにしている
犬の骨肉腫の初期症状は、膝蓋骨脱臼(パテラ)や骨折、脱臼といった整形外科疾患と同じような症状が見られます。
特に大型犬では、歩き方がおかしいといった初期症状を見逃さず、早めに動物病院を受診することが大切です。
また、四肢以外に骨肉腫が発生した場合でも、痛がるそぶりを見せたり骨の部分が腫れるといった初期症状が見られます。
ほかにも、発生した部位ごとに呼吸音の変化や鼻血、口の違和感などの初期症状が現れることもあるため、いつもと様子が違うと感じたときは動物病院を受診してください。
骨肉腫の初期症状が現れたときにできること
愛犬に骨肉腫の初期症状が見られたら、早めに動物病院を受診することが大切です。
すでに非常に強い痛みを抱えている状態のため、獣医師とよく話し合い、どんな治療を行うかを早期に決断する必要があります。
犬の骨肉腫の末期症状は?
犬の骨肉腫が進行すると、すでに肺などに転移していることから、さまざまな末期症状が現れます。
犬の骨肉腫の8つの末期症状(一例)
・うまく歩くことができなくなる
・病的骨折を起こしやすくなる
・元気や食欲がなくなる
・性格が変わったように見える
・発熱
・苦しそうに呼吸する
・咳が出る
・体重が減る
末期症状が見られる頃には、飼い主さんが見ても生きていることが辛いと判断できる場合もあるでしょう。
また、愛犬に骨肉腫の末期症状が現れたあたりに、獣医師から安楽死をすすめられることも珍しくはありません。
安楽死については専門家たちの間でも賛否両論あり難しい問題ですが、末期症状が現れた際には、どう選択するかを家族で話し合っておくことも大切です。
骨肉腫の末期症状が現れたときにできること
愛犬が骨肉腫の末期症状が現れたからといって、必ずしも安楽死を選択しなければいけないということはありません。
また、末期症状になったから治療をしないという選択もありません。
骨肉腫の末期症状が現れる頃には、想像もできない痛みを抱え、思うように動くことができない状態です。
通院を続けて愛犬のQOLを維持してあげるとともに、食べやすい食事にしたり、カートや台車、車椅子などを使用して外の空気を吸わせてあげる、床ずれが起きないように2~3時間おきに寝返りを補助してあげるなど、できる限りのことをしてあげましょう。
犬の骨肉腫で断脚しない選択はある?
犬が四肢の骨肉腫になった場合、痛みを取るために断脚手術が行われるのが一般的です。
とは言え、断脚しても断脚しない場合でも、生存期間にそこまで大きな変わりはないとされています。
それならば、断脚しないほうが愛犬のためなのではないかと考える飼い主さんもいるでしょう。
しかし、断脚しないという選択肢はあるのでしょうか?ここでは、断脚しない場合のリスクをご紹介します。
断脚しないリスク1|痛みでQOLが著しく低下する
犬の骨肉腫は非常に強い痛みを伴う腫瘍です。そのため、断脚しないと痛みで元気も食欲も低下し、思うように動けないストレスも抱えることになります。
愛犬の生活の質が著しく低下することは、飼い主さんも望んでいないでしょう。
断脚しないリスク2|骨肉腫の進行を早める可能性
犬の骨肉腫は、発見されたときにはすでに肺に転移している割合が90%以上と高いため、断脚しても断脚しない場合でも生存期間に大きな違いはなく、骨肉腫の進行には関係ないと思うかもしれません。
しかし、断脚しないことで愛犬がストレスを抱えたり、食欲が低下することは体力や免疫力の低下につながり、結果としてさまざまな病気の発症や骨肉腫の進行を早める可能性につながります。
足が3本になったら生活に支障をきたすのではないかと思い、断脚しないことを考えるかもしれませんが、犬はちゃんと対応できるので大丈夫です。
愛犬が骨肉腫になったら適切な治療をしてあげよう!
今回は、犬の骨肉腫について、初期症状や末期症状などをご紹介しました。
骨肉腫に限りませんが、どんな病気でも早期発見、早期治療はとても重要です。初期症状を見逃さず、愛犬に少しでも違和感を覚えたときは獣医師に相談しましょう。
また、末期症状が現れたときは、症状に合わせてその都度対処してあげてくださいね。
愛犬がガンと診断されると一人で抱え込んでしまいがちですが、獣医師によく相談し、何が一番愛犬にとって良いのかを考えてあげましょう。