犬の免疫療法とは?費用や効果、動物病院など

Cancer immunotherapy in dogs

犬のがん治療には、免疫療法という治療法があることをご存知ですか?

免疫療法は体の負担が少なく副作用も少ないことから、愛犬ががんと診断された飼い主さんたちから近年注目を集めています。

今回は、実際に愛犬に免疫療法をしている私が、犬のがん治療の1つである免疫療法の種類や効果、費用についてご紹介しますので、愛犬ががんと診断されて何かできることはないかと悩んでいる飼い主さんはぜひ参考にしてください。

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犬のがん治療の1種である免疫療法とは

Cavalier

免疫療法とは、犬がもともと持っている免疫力を上げる治療法です。

多くの動物病院では、犬のがん治療は外科手術による摘出や抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療が一般的。

しかし、これらの治療法も完璧ではなくそれぞれにデメリットや副作用が存在するほか、犬の状態やがんの状態によっては治療できない選択肢しかない場合もあります。

そこで近年注目を集めているのが、どんな犬にも行うことができ効果が期待できる免疫療法です。

犬のがんの免疫療法をしている病院は限られており、費用もかかりますが、さまざまな免疫療法が存在するため、愛犬や飼い主さんに合った方法を選択しましょう。

犬の免疫療法①活性化Tリンパ球療法(CAT)

活性化Tリンパ球療法(CAT療法)は、その名の通り活性化させたTリンパ球を静脈点滴で注入する免疫療法です。

犬自身のTリンパ球を2週間培養し、元の1000倍まで増やして再び犬の体内に戻します。

人間ではがんが小さくなったり、がんの進行が遅くなったという報告もあり、術後の再発防止や抗がん剤などの相乗効果、延命効果が期待できると考えられています。

ただし、T細胞性リンパ腫の場合は腫瘍細胞を増殖させる可能性があるため、実施しない動物病院もあります。

Tリンパ球とは

血液中に存在するリンパ球の6~8割を占める細胞。以下のような働きをする細胞がある

・ヘルパーT細胞:司令塔のような働き
・キラーT細胞:悪い細胞を破壊する働き
・制御性T細胞:免疫異常を起こさないように調整する働き

犬の免疫療法②樹状細胞療法(DC療法)

樹状細胞療法(DC療法)は、犬のみが対象となる残存病巣を叩く免疫療法です。

腫瘍に直接注入したり、近くのリンパ節に注入します。

免疫細胞の1つである樹状細胞を増殖・活性化させ、がん細胞を攻撃してくれるTリンパ球に攻撃の指示を出しやすくさせます。

犬自身の樹状細胞を1~2週間培養して体内に戻しますが、基本的に領域リンパ節が残存しているケースが対象で、組織給肉腫の場合は腫瘍細胞を増殖させる可能性があるため実施しない動物病院もあります。

また、治療効果や副作用などのデータが少なく、まだ手探り状態の治療法です。

領域リンパ節とは

がんの原発巣と直結したリンパ路を持つリンパ節の集団。所属リンパ節とも言う

犬の免疫療法③樹状細胞-活性化リンパ球療法(DC-CAT療法)

樹状細胞-活性化リンパ球療法(DC-CAT療法)は、活性化リンパ球療法(CAT療法)と樹状細胞療法(DC療法)の良いところを合わせた免疫療法です。

静脈点滴と注射による注入で、がんに対する攻撃力をより高めてくれます。

犬の免疫療法④キラーセル療法(KC療法)

キラーセル療法(KC療法)は、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)を増殖、活性化して全身に散らばるがんを攻撃する免疫療法です。

犬自身のNK細胞を2週間培養してから、静脈点滴によって体内に注入します。

ただし、T細胞性リンパ腫の場合は腫瘍細胞を増殖させる可能性があるため、実施しない動物病院もあります。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)とは

血液中に存在するリンパ球の1~3割を占める細胞。全身をパトロールしてがん細胞やウイルス感染細胞などを見つけ次第攻撃する。正常な細胞を攻撃することはない

犬の免疫療法⑤丸山ワクチン

丸山ワクチンは、リンパ球やNK細胞、マクロファージなどを活性化させるワクチンを定期的に注射する免疫療法です。

人間のがん患者でも使用されることがあり、副作用がなく延命効果やがん細胞の増殖を抑制または消失させる働きがあるとして、1964年から使用されています。

犬の場合の効果はわかっていませんが、同様の効果が期待できると考えられており、取り入れている動物病院も珍しくはありません。

3ヶ月程度を1クールとし、その間は2日に1回や1週間に3回の注射が必要です。

自分で愛犬に注射をすることができるなら、免疫療法の中では比較的費用を抑えられる方法ですが、通院する場合では毎回再診料がかかるほか、頻繁に通う大変さもあるでしょう。

また、西洋医学ではないため、動物病院の獣医師でも知らないこともあります。

犬の免疫療法⑥自己癌ワクチン

自己癌ワクチンは、手術で摘出したがん組織を細かくしてカプセルに封入し、再び犬の体内に戻す免疫療法です。

新しい免疫療法で行っている動物病院はまだ少ないですが、がんに対する免疫応答が効率よく得られ、がんの再発や転移に対しての治療効果が期待されています。

ただし、この免疫療法はがん組織そのものが必要となるため、これから手術を行う犬ではいいですが、すでに手術を終えてがん組織を保存していない犬や、手術ができない犬では適応外となります。

免疫療法は犬のがんに効果的?

dog with droopy ears

免疫療法は犬の免疫力を上げる治療法で、あくまでもがんと闘う力をサポートするためのものです。

そのため、免疫療法の効果は個体差があり、一概に効果がある・ないと言えるものではありません。

特に、進行がんや末期がんでは免疫療法に限らずですが、完治させることは難しいと言えるでしょう。

しかし、進行を抑えたり、再発防止効果やQOLの改善効果は期待できるとされ、免疫療法に力を入れる動物病院も増えてきました。

犬の免疫療法にかかる概算費用

犬の免疫療法は入院することなく通院でできるのが利点ですが、かかる費用は高額になりがちです。

動物病院は自由診療のため、診療費は動物病院ごとに異なりますが、おおよその費用目安は以下の通りになります。

活性化Tリンパ球療法(CAT療法)の概算費用

初回:66,000~88,000円(税込)
2回目以降:1回66,000~77,000円(税込)

樹状細胞ー活性化リンパ球療法(DC-CAT療法)の概算費用

1回あたり:88,000円(税込)

丸山ワクチンの概算費用

1回:990円~(税込)※2日に1回注射が必要

といったように、1ヶ月に数万円~数十万円の費用がかかります。

このほか、初診料や再診料、検査代、処方される漢方薬やサプリメントなどの費用がかかるため、免疫療法をする際はそれなりの費用を用意する必要があります。

また、ペット保険に加入している飼い主さんも、免疫療法にかかる費用はペット保険会社によって保険適応外になったり、漢方薬やサプリメントなどの費用はどこも補償対象外となるため注意してください。

犬のがんにおける免疫療法を行っている動物病院5選

toy poodle in the car

犬のがん治療に免疫療法を行っている動物病院は、まだそこまで多くないのが現状です。

実際、私の住んでいる地域に動物病院はたくさんありますが、免疫療法を行っているところは0件!愛犬のがんの免疫療法をするために片道40分かけて通っています。

免疫療法を行っている動物病院を探すのは大変なことなので、何件かまとめてみました。

東京都小金井市|ハル犬猫病院

小金井市にあるハル犬猫病院は、免疫療法の「活性化リンパ球療法(CAT療法)」「樹状細胞療法(DC療法)」「キラーセル療法KC療法)」「丸山ワクチン」を行っている動物病院です。

日本獣医がん学会Ⅱ種認定獣医師もおり、抗がん剤の使用の有無や原因となるがんに合わせて適応可能な免疫療法を提案してくれるため、知識がなくても安心してお任せすることができます。

ハル犬猫病院
・住所:東京都小金井市貫井南町2丁目15-11
・電話:042-388-8255
・診療時間:9:00〜12:30、15:30〜19:00
・休診日:年中無休(年末年始を除く)
・公式HP:https://haru-anim.com/

東京都品川区|品川WAFどうぶつ病院

品川WAFどうぶつ病院は、「活性化リンパ球療法(CAT療法)」「樹状細胞-活性化リンパ球療法(DC-CAT療法)」の2つの免疫療法を行っています。

当日受付も可能となっていますが、免疫療法は専門医が行うため、予約してから行くようにしましょう。

品川WAFどうぶつ病院
・住所:東京都品川区大崎5-1-5 品川年金事務所ビル1F
・電話:03-6431-9222
・診療時間:10:00~13:00、16:00~21:00(火曜日~19:00)
・休診日:年中無休
・公式HP:https://waf-ac.com/

千葉県流山市|千葉どうぶつ総合病院

流山市にある千葉どうぶつ総合病院は、「活性化リンパ球療法(CAT療法)」「KC療法」「樹状細胞-活性化リンパ球療法(DC-CAT療法)」の免疫療法を受けることができます。

とても大きな動物病院で、24時間救急対応をしてくれているのも助かりますね。

がんの免疫療法は専門医が対応となるため、予約してからの受診をおすすめします。

千葉どうぶつ総合病院
・住所:千葉県流山市南流山1-21-8
・電話:04-7157-8618
・診療時間:9:00~20:00(土日祝~17:00)
・休診日:年中無休
・公式HP:https://www.chiba-ah.com/

大阪府大阪市|岸上獣医科病院

阿倍野区にある岸上獣医科病院は、「樹状細胞-活性化リンパ球療法(DC-CAT療法)」の免疫療法を用いています。

動物に負担の少ない治療を行うことを掲げており、がんの免疫療法や椎間板ヘルニアなどの再生医療に力を入れてる動物病院です。

岸上獣医科病院
・住所:大阪府大阪市阿倍野区丸山通1丁目6-1
・電話:06-6661-5407
・診療時間:9:00~19:00
・休診日:日曜日
・公式HP:https://www.dr-kishigami.com/

大阪府箕面市|箕面外院どうぶつ病院

箕面外院どうぶつ病院は、最新の「自己癌ワクチン」の免疫療法を行っています。

獣医免疫細胞療法の研究会と共にあらゆる免疫療法を行ってきた院長が、まったく新しい免疫療法として取り入れたのが自己癌ワクチンです。

興味のある飼い主さんは、一度話を聞いてみてはいかがでしょうか。

■箕面外院どうぶつ病院
・住所:大阪府箕面市外院2丁目16-2
・電話:072-729-1204
・診療時間:9:00~12:30、16:00~19:00
・休診日:木曜・祝日
・公式HP:https://minohgein-ah.com/

犬のがん治療に免疫療法も活用しよう

smiling retriver

今回は、犬のがん治療の1つである免疫療法の種類や効果、費用についてご紹介しました。

免疫療法は副作用がほとんどなく、犬の体の負担も少ないもので画期的な治療法ですが、あくまでも免疫力を上げて、がんと闘う力をサポートしてあげるものということを忘れてはいけません。

また、免疫療法は費用がかさむということもしっかり考えた上で検討する必要があります。

更に、免疫療法をしているからと気を抜かず、普段から愛犬のストレスを軽減したり、食事内容に配慮するなど、免疫力の低下につながるようなことも避けてあげてくださいね。

参考文献

  • 茶屋ケ坂動物病院「腫瘍科 / がん治療の種類と病気のリスク」
  • 関内どうぶつクリニック「ガン免疫治療、自己リンパ球活性化療法、樹状細胞療法」
  • 武蔵小金井ハル犬猫動物病院「免疫細胞療法」
  • アリスどうぶつクリニック「あきらめないでがん治療」
  • 日本医科大学付属病院ワクチン療法研究施設「丸山ワクチンとは」
  • 和泉動物病院「再生医療(免疫細胞治療)」
  • 箕面外院どうぶつ病院「腫瘍科(自己癌ワクチン)について」