愛犬に手作りご飯を作る方が増えてきましたが、作る際は犬に必要な栄養素について配慮して食材選びをする必要があります。
今回は、犬の手作りご飯に必要な必須栄養素脂肪とその食材についてご紹介致します。
犬に必要な栄養素の欠乏症と中毒
犬に必要な栄養素は、たんぱく質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルの5大栄養素であり、これらに水を加えて6大栄養素と呼ぶこともあります。
手作りご飯やドッグフードでは、これら必要栄養素がある程度犬の体に適したバランスで配合されている必要があり、特定の栄養素が極端に不足すると欠乏症として体に何かしらの症状が引き起こされる可能性があります。
また、特定の栄養素が極端に過剰に含まれる食事によって、過剰症としての症状が引き起こされることがあります。
そのため、愛犬の健康維持のために作る手作りご飯では、必要栄養素や食材に関する基礎知識が必要になります。
愛犬にも品質の高い食事を、と愛情を込めて作った手作りご飯のせいで愛犬の体調が悪くなるのでは元も子もありませんので、基礎知識はしっかりと身につけておく必要があります。
犬の体内での脂肪の働き
ここでは、犬の体にとって脂肪がどのような働きを補っているのか詳しくご紹介していきます。
脂肪は多く摂りすぎると肥満リスクを高めますが、重要な役割を果たす栄養素の1つでもありますので、制限しすぎるのは犬の健康にとって好ましくありません。
特に運動量の多い犬については、制限のしすぎに注意しましょう。
犬の体に含まれる脂肪は10%~40%程度
脂肪は脂質の一種である犬に必要な栄養素で、主に食材の中に含まれている脂質を脂肪と呼びます。
なお、犬の体には、脂肪が10%~40%程度含まれているといわれています。
犬のエネルギー源として脂肪はタンパク質の2倍以上
脂肪は犬のエネルギーに必要な栄養素であり、エネルギー源として考える上では、驚くことにたんぱく質や糖質の2倍以上(/1g)ものエネルギーを補うことができる栄養素です。
その他の犬の体にとっての脂肪の役割
その他、ビタミンA、D、E、Kの脂溶性ビタミンの吸収に重要な役割を補い、犬の合成できない脂肪酸である必須脂肪酸を体に補うため、体温調整を行うため、様々な生理機能維持のためなど、多様な用途で必要とされます。
ちなみに、脂肪と脂質は厳密には異なり、脂肪が犬のエネルギー源になるのに対し、脂肪以外の脂質に関してはエネルギー源としてはそれ程効果が期待できないのが特徴です。
① 犬が肉や魚などの脂肪を食事で摂取
② これらが消化酵素リパーゼによって脂肪酸とグリセロールに分解される
③ 犬の体内の小腸部分から吸収されることで中性脂肪となる
④ 中性脂肪がリンパ管を通じて血液に運び込まれる
⑤ 犬の全身に送られて、様々な機能を果たす
栄養素である脂肪の種類
ここでは、犬に必要な栄養素「脂肪」に関して、動物性油脂と植物性油脂の分類、及び飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の分類についてご紹介致します。
動物性油脂と植物性油脂
手作りご飯などの犬の食事内の脂肪は動物性油脂と植物性油脂に分類されます。
犬の手作りご飯でよく使用される動物性油脂肪は、鹿や馬、牛などの肉類や魚などの動物に含まれている食材の脂肪です。
植物性油脂は名前の通り植物性の食材に含まれる脂肪で、食材例としてはナッツ類など。
しかし、ナッツ類などを犬の手作りご飯で使用することは殆どないので、消化吸収性を配慮して主に動物性油脂肪が使用されることになります。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類があります。
これらは、炭素の二重結合があるか否かによって種類が分かれます。
被毛の健康維持や四肢・関節の炎症や痛み緩和などに役立つ栄養素として知られているオメガ3脂肪酸をご存じの方は多いかと思います。
これは、不飽和脂肪酸の炭素の二重結合の中の2つ以上の結合があるEPAやDHAなど(多価不飽和脂肪酸)を指します。
犬の場合は、オメガ脂肪酸(3系と6系)のような2つ以上の二重結合がある脂肪酸を体内で合成することができないため、サプリメントのみならず最近では成長期の犬だけでなく成犬用・老犬用ドッグフードに添加することも多くなりました。
オメガ脂肪酸のみならず、不飽和脂肪酸全般は犬の体内で合成できないため、手作りご飯などの食事で取り入れる必要があります。
脂肪のAAFCO基準
全米飼料検査官協会(AAFCO)のドッグフード基準(乾物量)で考えた場合、最低値として成長期で粗脂肪8.5%、維持期で5.5%。
リノール酸に関しては成長期で1.3%、維持期で1.1%になっています。
なお、αリノレン酸は成長期のみ基準が設けられ0.08%、EPA+DHAも同様に成長期のみ基準が設けられており0.05%となっています。
脂肪の欠乏症と中毒
犬に必要な栄養素である脂肪が犬の体内で急激に欠乏した場合は、脂漏症や外耳炎、成長阻害がみられるようになり、脱毛や湿潤性皮膚炎を中心に皮膚や被毛にも悪影響を及ぼします。
犬の嗜好性を高める上で脂肪は重要な役割を補うものの、過剰になった場合は様々な病気の予備軍である肥満はもちろん、下痢を引き起こしたり肝臓や膵臓の疾患原因になりえるので注意が必要です。
脂肪源となる食材の選び方
犬の手作りご飯で脂肪を使用する際、主に肉や魚を使用します。
ここでは、脂肪源となる食材選びに役立つ情報を紹介致します。
脂肪源食材を選ぶ時の注意点
先述で紹介した通り、エネルギー源として考えたとき、脂肪はたんぱく質や糖質の2倍以上(/1g)ものエネルギーを補うことができます。
そのため、運動量の少ない犬に関しては手作りご飯での脂肪分の調整には十分注意が必要。
近年、肥満を中心に犬の生活習慣病も問題視されているので、運動量が少ない犬や老犬、肥満気味の犬などの手作りご飯では肉や魚などの食材選定に気をつけなければいけません。
日本国内で飼育されている犬に関しては、実は半数以上が肥満気味であるともいわれており、様々な病気の原因になる肥満には細心の注意が必要です。
しかしながら、脂肪は犬の嗜好性を高める効果があるので、痩せ気味の犬や病気や老衰によって食欲が極端に低下している犬には、少量でエネルギー源を確保できる万能栄養素となります。
脂肪で考えるおすすめ食材
比較的脂肪の少ない食材の一例
・鹿肉:脂肪が少なく低カロリー・高たんぱく。鉄分も豊富なのが特徴。
・鶏ささみや鶏胸肉:鶏肉の中では脂肪が少なめだが、タンパク質が多いのが特徴。
・猪肉:豚の原種であるものの、低カロリー・低脂肪であることが特徴。中性脂肪になりにくい特性をもっている。
・馬肉:比較的脂肪分が少なく、低カロリー・低コレステロール。部位によっても多少異なるが、牛肉と比較して約5分の1程度。馬肉にはカルニチンが含まれており、犬の体内の脂肪燃焼効果が期待できる。
犬の手作りご飯には様々な肉や魚食材を取り入れよう
今回は、犬の手作りご飯で必要となる栄養素である脂肪についてご紹介致しました。
犬の手作りご飯を作るときは、肉や魚のアミノ酸スコアとアルギニンの含有量、脂肪分やエネルギー量に配慮して、様々な肉や魚食材を取り入れることをおすすめします。
参考文献:
・(獣医師)藤本愛彦,犬の管理栄養士,一般社団法人全日本動物専門教育協会,2018.
・奈良なぎさ,犬と猫の栄養学,緑書房,2016.
・岡本羽加,手作り犬ごはんの食材帖,日東書院,2011.