今回は、動物性タンパク質源となる食材と腸内環境の健康維持に役立つ食材の2つをご紹介させていただきます。
がんを発症している犬に限りませんが、犬の手作りご飯では食材の栄養素の配分に気をつけて、豊富な食材を利用。
愛情と栄養たっぷりの手作りご飯をつくってあげましょう。
動物性タンパク質源となる食材
がんの犬の場合は炭水化物(糖質)を極力制限して、代わりに体のエネルギー源となる良質な動物性タンパク質を豊富に使用することで免疫力を維持(強化)します。
ここでは、がんの犬の手作りご飯におすすめの動物性タンパク質源の一例をご紹介致します。
鹿肉(タンパク質値目安:23.9g/100g)
鹿肉は栄養価が高い上、他の動物肉と比較すると低カロリー・低脂肪。
野生で育つ草食動物なので、栄養価が高いのも魅力の1つです。
含まれている栄養素としては、タンパク質、ビタミンB群、ミネラルなどに加えて、肉では珍しいDHA(ドコサヘキサエン酸)も含まれています。
体内の活性酸素の除去が期待でき、体を温める食材なので冷えによる免疫力低下予防にも効果的。
犬の手作りご飯では積極的に取り入れたい動物性タンパク質ですが、がん細胞と闘う犬や抗がん剤による副作用で免疫力が低下しやすい犬には尚おすすめです。
ラム肉(タンパク質値目安:20.0g/100g)
ラム肉などの羊肉は、肉の中で一番体を温める効果が高い食材です。
体の冷えからくる免疫力低下を防止するために有効。
含まれる栄養素としては、タンパク質、ビタミンA・B群・カルニチンや鉄分などです。
ラム肉に含まれている必須アミノ酸はバランスが非常に良いのが特徴。
低カロリー・低コレステロールで脂肪燃焼促進効果が期待できることから、がんで免疫力を高めたい犬だけでなく、ダイエット中の犬にもおすすめです。
ただし、抗がん剤など何かしらの理由で食欲低下が引き起こされている場合(エネルギー源が不足している場合)は、手作りご飯ではカロリーが高い肉を使用することをおすすめします。
鮭(タンパク質値目安:20.1g/100g)
鮭の特徴は、アスタキサンチンと呼ばれる抗酸化力の高い成分が含まれていることで、体内の活性酸素の発生を制御する成分です。
抗酸化作用のある栄養素としてビタミンCが有名ですが、アスタキサンチンに関しては約6000倍の抗酸化力が期待できるといわれています。
がんによって放射線治療を行っている犬の場合は、特に活性酸素が生じやすくなるという報告があるので、手作りご飯では取り入れたい食材です。
ただし、鮭にはチアミナーゼと呼ばれるビタミンB1を分解する酵素が含まれているので、継続的に多く与えてしまうとビタミンB1欠乏症のリスクが高まります。
犬の手作りご飯では、常用せずに数日に一度与えるなど頻度を工夫すると良いでしょう。
その他、人が食べるために塩分を加えた鮭は使用せず、刺身用の味付けされていないサーモンなどを使用しましょう。
動物性タンパク質源となる食材|使用例
参考までに、愛犬バーニーズマウンテンドッグの場合、基本的には動物性タンパク質は以下のようなローテーションを組んでいました(週によって多少変動あり)。
鹿肉をベースとし、夏は体を冷やす効果が期待できる馬肉を使用するなど、季節によって食材を使い分けるのも犬の健康維持には効果的です。
月 ・朝 鹿生肉(ロース) ・晩 加熱サーモン&卵
火 ・朝 鹿生肉(モモ) ・晩 ラム加熱肉
水 ・朝 鹿生肉(ロース) ・晩 加熱鶏むね肉
木 ・朝 鹿生肉(モモ) ・晩 加熱サーモン&卵
金 ・朝 鹿生肉(ロース) ・晩 加熱豚肉
土 ・朝 鹿生肉(モモ) ・晩 ラム加熱肉
日 ・朝 鹿生肉(ロース) ・晩 その他の肉&魚
腸内環境の健康維持に役立つ食材
犬によって個体差がありますが、体全体の60%~70%程度の免疫細胞が腸(腸管)に集中しているといわれていますので、腸の健康維持は免疫力を維持(強化)するために大切です。
ここではがんの犬の手作りご飯におすすめの腸内環境の健康維持に役立つ食材の一例をご紹介致します。
ヨーグルト(タンパク質値目安:3.6g/100g)
腸の健康維持を目的として人でも食べている方が多いヨーグルトですが、犬の場合も乳酸菌によって整腸効果が期待できます。
腸内にあるビフィズス菌を活性化することで悪玉菌を制御。
腸内の免疫細胞を活性化する効果が期待できるので、免疫力が低下しやすいがんの犬や便の状態が安定しない(下痢や便秘)犬には特におすすめです。
ただし、与えすぎは腸内環境の健康を害すので量には気をつけましょう。
参考までに愛犬バーニーズマウンテンドッグ(42kg)の場合は、手作りご飯1食で(無糖ヨーグルト)大さじ3杯程度を週に数回与えていました。
おやつとして与えるのも良いでしょう。
ゴボウ(タンパク質値目安:1.8g/100g)
ゴボウは水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が豊富で、腸内細菌の環境改善(ビフィズス菌の成長を促す)に有効なイヌリン(不溶性食物繊維)と呼ばれる成分が含まれています。
イヌリンは腸内の胆汁酸を吸着して体外に排出。腸の蠕動運動を活発にさせたり犬の体に不要な物質を排泄させるために効果を示します。
その他ごぼうに含まれる酵素であるペルオキシダーゼが活性酸素除去(無毒化)に効果的なため、がんを発症している犬の手作りご飯には適度に取り入れたい食材です。
ごぼうは消化しにくいため、必ず加熱後にすりおろし器やフードプロセッサーなどで細かくしてから与えましょう。
参考までに愛犬バーニーズマウンテンドッグ(42kg)の場合は、手作りご飯1食で70gを週に3回程度与えていました。
挽きわり納豆(タンパク質値目安:16.6g/100g)
犬の腸内環境の健康維持に効果的な食材の1つである納豆には、悪玉菌の増殖を制御するために役立つ納豆菌が多く含まれており優れた整腸作用が期待できます。
納豆菌は、腸内の腐敗菌の増加制御の他、腸内で善玉菌として働くことで腸内に存在する善玉菌の増殖を更に促す効果が期待できます。
ただし、我が家の愛犬のように胃拡張・胃捻転症候群になりやすい犬には注意が必要。
一度に粘り気のある食材をたくさん与えてしまうのは危険ですので、大型犬は特に一度に与える量を少量にとどめましょう。
胃拡張・胃捻転症候群リスクもさることながら、炭水化物も含まれている(10.5g/100g)ので、愛犬の場合は1食で50gを週に2回程度を目安に与えていました。
腸内環境の健康維持に役立つ食材|使用例
愛犬の場合はがん発症以前(子犬期)から下痢を引き起こしやすい体質であり、腸内環境の健康維持には特に注意していました。
ドッグフードを変えても改善しなかった長年にわたる定期的な下痢症状でしたが、手作りご飯に変更することで改善。
便の状態が4才前にようやく安定しました。
以下に愛犬の腸内環境の健康維持のために使用していた食材の一例をご紹介致します。
・ヨーグルト ・ゴボウ ・挽きわり納豆 ・キャベツ ・オクラ ・長いも
・オリーブオイル ・昆布(出汁) ・消化吸収しやすい鹿生肉や魚類 など
がんの犬に食材を使用するときの注意点
ここでは、がんの犬に食材を与えるときの注意点や抗がん剤治療中の注意点について、ご紹介させていただきます。
食材は消化しやすいように細かくする
犬は野菜や穀物などの消化を得意としないため、肉や魚以外は消化しやすいよう細かくして与えましょう。
また、生肉に慣れていない犬の場合、徐々に生食に慣らしていかないと下痢や嘔吐などの消化器系症状を引き起こす原因になります。
その他、どんなに優秀な食材であっても与えすぎは禁物です。
犬の手作りご飯を作るときは栄養素の異なる多様な食材をバランスよく与えることが大切です。
それぞれの栄養素の欠乏症や過剰症に気をつけて、量や配分をしっかりと考えて手作りご飯を作ってあげましょう。
愛犬が抗がん剤など治療中の場合は獣医師に確認
犬のがんの進行状況や発症部位などによって、適した栄養素が異なる場合があります。
愛犬ががんを発症している(特に抗がん剤治療中)場合は、必ず獣医師に食事管理について相談しましょう。
※本記事の栄養成分値は文部科学省「食品成分データベース」を参考に算出。生の状態での食材成分値となっております