犬に多い皮膚病の1つに、マラセチア皮膚炎があります。
マラセチア皮膚炎は皮脂の分泌が多くなったり、食物アレルギーによって引き起こされるため、愛犬の食事管理も重要になってきます。
マラセチア皮膚炎を治療せずにそのままにしてしまうと、痒みが強くなるのはもちろん、愛犬の体が臭くなり、脱毛や皮膚の黒ずみなどを起こしてしまうので適切に治療してあげることが大切です。
そこで今回は、犬のマラセチア皮膚炎の治療法や食事管理についてご紹介します。
愛犬にマラセチア皮膚炎の疑いがあったり、なかなか治らなくて困っているという飼い主さんは、ぜひ参考にしてください。
犬のマラセチア皮膚炎とは?マラセチアが過剰に増えて起こる病気
犬のマラセチア皮膚炎は、皮膚に常在しているマラセチア(真菌)が何らかの原因によって過剰に増えたことで炎症を起こす病気です。
マラセチアは宿主特異性が高いので、ほかの動物や人間に感染することはありません。
また、マラセチアは同じ皮膚の上に常在するブドウ球菌とも関係が深く、膿皮症を併発してしまうこともあります。
犬のマラセチア皮膚炎の原因
犬のマラセチア皮膚炎の原因は、主に以下のことが考えられます。
- 生まれつき皮脂の分泌が多い
- 皮脂が多い状態が続いている
- マラセチアに反応するアレルギーがある
- 食物アレルギーや犬アトピー性皮膚炎のアレルギー性皮膚炎を患っている
- 甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症を患っている
- シャンプーのし過ぎ、もしくはシャンプー不足
- 高温多湿の環境
マラセチアは皮脂を栄養源として増えるため、もともと皮脂が多いシーズーやミニチュアシュナウザーなどの犬種はかかりやすいです。
また、マラセチア皮膚炎は高温多湿の季節に悪化しやすく、梅雨時や暖房を使用する冬場などは十分に注意してあげましょう。
犬のマラセチア皮膚炎の症状
犬のマラセチア皮膚炎の初期症状は皮膚の赤みや痒み、ベタつきですが、慢性化することでフケや油っぽい体臭、皮膚の黒ずみなどが見られるようになります。
■犬のマラセチア皮膚炎が発症しやすい場所
耳の中、口、あご、首、わき、指の間、爪の周囲、お腹、太ももの内側、陰部周囲、肛門周囲
また、パグやフレンチブルドッグのように顔にヒダがある犬種では、ヒダの間にもマラセチア皮膚炎が発症しやすいため清潔に保ってあげることが大切です。
特にマラセチア皮膚炎に気をつける犬種
マラセチア皮膚炎は、皮脂の分泌が多い犬がなりやすいため、以下の犬種は特に注意してください。
■マラセチア皮膚炎になりやすい犬種
トイプードル、チワワ、マルチーズ、柴犬、シェットランドシープドッグ、フレンチブルドッグ、パグ、ジャーマンシェパード、ビーグル、シーズー、ミニチュアダックスフンド、ミニチュアシュナウザー、ラブラドールレトリバー、テリア種、スパニエル種
若い年齢でマラセチア皮膚炎を発症すると、加齢とともに悪化しやすい傾向にあります。
外耳炎の再発から始まり、その後、体に症状が拡大することが多いとされています。
犬のマラセチア皮膚炎の治療法は?シャンプー療法と内服薬が一般的
犬のマラセチア皮膚炎の一般的な治療法は、マラセチアの数を減らすことを目的に週に2~3回のシャンプーと、抗真菌剤の内服です。
治療期間はマラセチア皮膚炎の状態や犬の状態によって異なりますが、1ヶ月程度はかかると思っておいたほうがいいでしょう。
また、マラセチア皮膚炎に使用する薬用シャンプーは、ネットでもさまざまなものが販売されていますが、犬の皮膚の性質やマラセチア皮膚炎の状態によって使用するシャンプーや調整は異なるため、獣医師に指示されたものを使用してください。
犬のマラセチア皮膚炎が局所的の場合は塗り薬の場合もある
基本的には犬のマラセチア皮膚炎の治療法はシャンプー療法と内服薬ですが、局所的の場合は塗り薬が処方されることもあります。
シャンプー療法と合わせて使用することで効果が高まることが期待できます。
犬のマラセチア皮膚炎のシャンプー後は保湿を忘れずに
犬のマラセチア皮膚炎の治療ではシャンプーが欠かせませんが、シャンプーやドライヤーは皮膚を乾燥させてしまうため、シャンプー後は保湿剤を塗ってあげる必要があります。
また、ドライヤーは熱風ではなく、冷風で行うこともポイントです。
お湯の温度が高かったり、ドライヤーの熱風をあてることで犬の痒みが増してしまい、書き壊してしまうと二次感染なども起こしかねません。
■犬のマラセチア皮膚炎のシャンプーのポイント
- お湯の温度は35度程度
- ドライヤーは冷風で使用する
- シャンプー後は必ず保湿する
マラセチア皮膚炎の原因を突き止めることも大切
犬のマラセチア皮膚炎は、常在しているマラセチアが何らかの原因によって過剰に増えることで起こりますが、単純に治療でマラセチアを減らせばいいかというと、そういうわけでもありません。
何が原因でマラセチアが増えたのか、原因を突き止めてそれに合わせた対処も必要です。
食事が原因、基礎疾患が原因、シャンプーが原因、生活環境が原因などさまざまで、基礎疾患やアレルギーであれば動物病院での治療、食事やシャンプー、生活環境であれば飼い主さんの対策が必要です。
犬のマラセチア皮膚炎の食事管理は?
愛犬がマラセチア皮膚炎になった場合、原因によって食事管理も異なります。
食物アレルギーが原因のマラセチア皮膚炎の食事管理
犬のマラセチア皮膚炎の原因が食物アレルギーの場合、何の食材のタンパク質にアレルギーがあるのか除去食試験と食物負荷試験を行って特定していきます。
そして、特定されたアレルゲンを避ける食事を続けていくことで、マラセチア皮膚炎は改善します。
特定できるまでの間は、水とドッグフードだけでおやつなどは与えてはいけません。
このとき、ただ単にアレルゲンとなる食材を避けるだけでなく、食べても大丈夫な食材も探してあげることで犬の食事の楽しみが損なわれることはないでしょう。
皮脂の分泌が多い原因のマラセチア皮膚炎の食事管理
犬のマラセチア皮膚炎の原因が皮脂の分泌が多い場合、食事内容の見直しをしてください。
■食事内容を見直すポイント
- 犬のライフステージ(年齢)に合った食事が与えられているか
- 栄養バランスの偏った食事になっていないか
- 愛犬の体質に合った食事を与えられているか
- 脂肪分の多い食事になっていないか
犬の食事は、栄養バランスがきちんと取れていればドッグフードでも手作りごはんでも問題はありませんが、体質に合う合わないがあります。
栄養バランスの偏った食事や体質に合っていない食事、ライフステージに合っていない食事を与えていると、皮脂の分泌が過剰になり、脂漏症を発症すると考えられています。
脂の多い皮膚はマラセチアの増殖を招いてしまう原因にもなりかねないため、食事内容も見直してください。
マラセチア皮膚炎の原因に合わせて食事管理をしてあげよう
今回は、犬のマラセチア皮膚炎の治療法や食事管理についてご紹介しました。
マラセチア皮膚炎はさまざまな原因で引き起こされますが、動物病院の治療はもちろん、原因によっては食事管理も合わせて行うことで改善が期待できます。
犬は言葉が話せないため、痒みなどの辛さを訴えてくることはないでしょう。
しかし、痒みが続くのは相当のストレスとなり、ストレスから体調不良を起こしてしまうこともあります。
愛犬のためにも、食事管理にも気を遣ってあげてくださいね。