がんの犬におすすめの食材 ファイトケミカル編〔管理栄養士解説〕

phytochemical ingredients for cancer dog

今回は、がんの犬におすすめのファイトケミカル食材について、犬の管理栄養士が一般的に期待できるとされている効果など、食材別でご紹介いたします。

saki mochizuki

がんの犬に効果的?ファイトケミカル食材

a dog stick out his tongue

人間の健康食材として有名なファイトケミカルですが、犬の健康にとっても有効に働く食材が多いといわれています。

ファイトケミカルとは、強い免疫力向上を特徴とする植物性の栄養素で第七の栄養素とも呼ばれています。

野菜や果物を中心とした食材に多く含まれており、それら食材の香りや色素、辛味成分などが犬の健康維持に有効に働きます。

お茶やぶどうをはじめとし一部犬に与えてはいけない食材もありますが、野菜や果物であれば大抵の場合は犬の健康(病気や発がん物質から体を守る)にも効果的です。

ファイトケミカル食材は抗酸化活性や抗炎症効果が期待でき、犬のがんについて考える上では体内の発がん物質を体から排除するための酵素を活性化するためにも効果的です。

ここでは、がん予防のために手作りご飯を作っている方におすすめのファイトケミカル食材の一例をご紹介致します。

ファイトケミカル、ブロッコリースプラウト(スルフォラファン)

a dog and woman

・10kgの犬の場合の目安量/1日15g程度

ブロッコリースプラウトに含まれるスルフォラファンと呼ばれる栄養素に抗がん作用があるといわれており、ブロッコリーなど他のアブラナ科の野菜にもこの栄養素が含まれています。

ブランドによって差は生じるものの、全般的にブロッコリースプラウトのスルフォラファン含有量は他のアブラナ科の食材と比較すると非常に高いのが特徴です。

スルフォラファンの抗酸化作用や解毒作用に関しては説明を省きますが、がんにおいては特に慢性的に体で生じる炎症を制御してがんを予防したり、がん細胞の死滅や収縮(アポトーシス)を誘導する効果があることから、愛犬の場合はがんの転移防止の目的で手作りご飯に定期的に取り入れていました。

スルフォラファンの効果は一般的に人の場合は3日間程度持

犬に関しては不明確ではありますが3日に一度は必ず使用していた食材です。

その他、基礎的なことですがアブラナ科の食材は甲状腺機能に疾患がある犬の場合は与えないようにしましょう。

ファイトケミカル、とまと(リコピン)

standing shiba inu

・10kgの犬の場合の目安量/1日20g程度

とまとに多く含まれるリコピンは、強い抗酸化作用が期待できることから犬の健康維持にも有効な食材です。

リコピンには様々な効果が期待できますが、中でも犬の体に不必要な活性酸素除去に役立つ抗酸化力に関してはビタミンEの100倍程度(またはそれ以上)です。

人の場合は様々な体の部位発症におけるがん細胞の成長を制御すると考えられており、とまとにはリコピン以外にもがん予防が期待できる不飽和脂肪酸(α-リノレン酸)も含まれています。

リコピンは加熱してもそこまで栄養価が損なわれず体への吸収率が倍以上になるため、私の場合は少し加熱して冷ましてから愛犬の手作りご飯に使用していました。

青い未熟なものにはトマチンと呼ばれる犬にとっての有毒成分が多く含まれているので、しっかりと赤く熟したものを選んで与えるようにしましょう。

その他、とまとには体に蓄積しやすい脂溶性ビタミンが含まれているので、他の食材との組み合わせに注意が必要です。

インターネット上の犬の手作りご飯レシピを見ていると、にんじんを多く使用する方がいますが、β−カロテン当量が8600μg/100g(とまとはβ−カロテン当量540μg/100g)となっており、手作りご飯においては犬のビタミンA過剰症が多く発生していることが問題視されています。

愛犬の手作りご飯をつくる場合は、犬の体に蓄積しやすい脂溶性ビタミン食材を中心に特定の栄養素が過剰(または不足)にならないよう、しっかりとり栄養配分を考慮しながらつくりましょう。

ファイトケミカル、ごま(セサミン)

toy poodle eating dogfood

・10kgの犬の場合の目安量/1日小さじ1杯程度

ごまに含まれるセサミンはポリフェノールの一種で、抗酸化作用がとても強い成分です。

犬の体に不要な過酸化脂質や活性酸素除去効果が期待できることから、がん予防や制御に効果的です。

特に黒ごまに関しては、ブルーベリーに含まれるアントシアニンも多く含んでおり、活性酸素の働きを抑えるために役立ちます。

なお、ごまに関しても犬が消化吸収しやすいよう、摩り下ろしてから与えることをおすすめします。

その他、ごまには脂肪酸が含まれるため酸化しやすいのが特徴。

酸化した食事は犬の健康被害の原因になるので、手作りご飯で与える場合は食事の直前に摩り下ろしてご飯にトッピングすることをおすすめします。

ファイトケミカル、しそ(アントシアニン)

Cavalier

・10kgの犬の場合の目安量/1日3g程度

青じそには免疫力向上に役立つビタミンC、活性酸素制御に役立つβカロテン、ペリラアルデハイドなどの殺菌成分が含まれております。

また、赤しそには黒ゴマ同様にアントシアニンも含まれていることから、犬のがんの予防や進行制御を目的として手作りご飯で取り入れたい食材の1つです。

また、しそに含まれる香り成分によって犬のストレス緩和にも効果が期待できるといわれていますが、嗅覚の優れた犬にとっては香りが強すぎるので手作りご飯で使用する際は少量にとどめましょう。

しそ科の植物に関しては、人の場合はがんの増殖防止や抗がん剤が効きにくくなった細胞に対しての効果などが幅広く研究されています。

食材を使用するときの注意点

Miniature dachshund with flowers

犬は野菜や穀物などの消化を得意としないため、野菜などの食材はフードプロセッサーなどで細かくして消化吸収しやすい形状にして与えましょう。

また、アレルギーなどの観点から、はじめて犬の手作りご飯で使用する食材は少量から試すことをお勧めします。

ファイトケミカルを中心に、どんなにがんの予防や制御に有効とされる食材であっても与えすぎは禁物

犬の手作りご飯を作るときは栄養素の異なる様々な食材をバランスよく取り入れることが大切ですので、欠乏症や過剰症に細心の注意を払いながらバランスを考えて作ってあげましょう。

その他、犬のがんの発症部位や体の状況により食事管理ポイントが異なる場合があります。

がんを発症している(治療中)の犬の場合は、獣医師に食事管理で気をつけたいことに関して予め相談しておくと良いでしょう。

※本記事の栄養成分値は文部科学省「食品成分データベース」を参考に算出。生の状態での食材成分値を記載しております