愛犬に手作りご飯を作る方が増えてきましたが、作る際は犬に必要な栄養素について配慮して食材選びをする必要があります。
今回は、犬の手作りご飯に必要な必須栄養素(たんぱく質)とその食材についてご紹介致します。
犬に必要な栄養素の欠乏症と中毒
犬に必要な栄養素は、たんぱく質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルの5大栄養素であり、これらに水を加えて6大栄養素と呼ぶこともあります。
手作りご飯やドッグフードでは、これら必要栄養素がある程度犬の体に適したバランスで配合されている必要があり、特定の栄養素が極端に不足すると欠乏症として体に何かしらの症状が引き起こされる可能性があります。
また、特定の栄養素が極端に過剰に含まれる食事によって、中毒としての症状が引き起こされることがあります。
そのため、愛犬の健康維持のために作る手作りご飯では、必要栄養素や食材に関する基礎知識が必要になります。
愛犬にも品質の高い食事を、と愛情を込めて作った手作りご飯のせいで愛犬の体調が悪くなるのでは元も子もありませんので、基礎知識はしっかりと身につけておく必要があります。
必要栄養素のたんぱく質とは?
犬の体の構成成分であるたんぱく質は、主に活動に必要なエネルギーを供給したりホルモンや免疫抗体、酵素などの素になる必要栄養素です。
ここでは、たんぱく質(アミノ酸)の種類や特徴、必要性などをご紹介致します。
アミノ酸の働き
たんぱく質は、20種類のアミノ酸が結合してできた化学結合で結びついた純物質です。
犬の体内でたんぱく質はアミノ酸として消化吸収されたのち、動物特有のたんぱく質に再度合成されて犬の体にとって重要な栄養素として働きます。
① 犬が肉や魚、卵などのたんぱく質を食事で摂取
② 犬の消化器官を通過するとき、消化酵素の働きでアミノ酸に分解される
③ アミノ酸が犬の腸管を通過する
④ 犬の体内の様々な部位で必要なたんぱく質に再度合成される
犬の必須アミノ酸
20種類のアミノ酸のうち、犬が体内で十分な必要量を合成できず食事で摂取しなければいけないもの(=必須アミノ酸)が、以下の10種類。
種類によって体内での働きが異なります。
- アルギニン:肉などの大抵のたんぱく質食材に含まれているため、肉や魚などを手作りご飯で十分使用していれば不足することはないが、手作りご飯自体のたんぱく質割合自体が極端に少ないと、急速に欠乏症が起こりやすいので注意が必要。
全米飼料検査官協会(AAFCO)のドッグフードで考えると乾物量として、成長期でアルギニン1%以上、維持期で0.51%以上が推奨とされる。 - ヒスチジン:ヒスチジンは代謝によってヒスタミンが生じ、様々な臓器の動きに必要な平滑筋の収縮機能や毛細血管の拡張などに必要とされる。全米飼料検査官協会(AAFCO)のドッグフードで考えると乾物量として、成長期で0.44%以上、維持期で0.19%以上が推奨とされる。
- イソロイシン:イソロイシン、ロイシン、バリンの3つ(分岐鎖アミノ酸)は、犬の筋肉のたんぱく質合成に必要不可欠な栄養素。イソロイシンに関しては、全米飼料検査官協会(AAFCO)のドッグフードで考えると乾物量として、成長期で0.71%以上、維持期で0.38以上が推奨とされる。
- ロイシン:イソロイシン、ロイシン、バリンの3つ(分岐鎖アミノ酸)は、犬の筋肉のたんぱく質合成に必要不可欠な栄養素。ロイシンに関しては、全米飼料検査官協会(AAFCO)のドッグフードで考えると乾物量として、成長期1.29%以上、維持期で0.68以上が推奨とされる。
- バリン:イソロイシン、ロイシン、バリンの3つ(分岐鎖アミノ酸)は、犬の筋肉のたんぱく質合成に必要不可欠な栄養素。バリンに関しては、全米飼料検査官協会(AAFCO)のドッグフードで考えると乾物量として、成長期0.68%以上、維持期で0.49以上が推奨とされる。
- リジン:リジンは、犬の体内のたんぱく質合成に必要不可欠なアミノ酸で、全米飼料検査官協会(AAFCO)のドッグフードで考えると乾物量として、成長期0.9%以上、維持期で0.63以上が推奨される。
- メチオニン:メチオニンは含硫アミノ酸と呼ばれる栄養素で、硫酸によって尿を酸性にする働きがある。全米飼料検査官協会(AAFCO)のドッグフードで考えると乾物量として、成長期0.35%以上、維持期で0.33%以上が推奨される。
- フェニルアラニン:フェニルアラニンは、体内で代謝された際にチラミンやドーパミンなど様々な神経伝達物質が生じる栄養素。全米飼料検査官協会(AAFCO)のドッグフードで考えると乾物量として、成長期で0.83%以上、維持期で0.45%以上が推奨とされる。
- スレオニン(トレオニン):犬が食事で摂取したたんぱく質を体内でエネルギーに変換するために必要な栄養素。その他にも新しい細胞を作るためにも必要となる。全米飼料検査官協会(AAFCO)のドッグフードで考えると乾物量として、成長期で1.04%以上、維持期で0.48%以上が推奨とされる。
- トリプトファン:トリプトファンは、犬の肝臓で代謝されることでナイアシン(ビタミンB群)を生じるなど様々な働きがあり、全米飼料検査官協会(AAFCO)のドッグフードで考えると乾物量として、成長期で0.2%以上、維持期で0.16%以上が推奨とされる。
たんぱく質の欠乏症と中毒
たんぱく質が犬の体内で急激に欠乏した場合、成長不良や不妊、貧血、食欲低下や体重減少がみられるようになり、脱毛を中心に被毛にも悪影響を及ぼします。
犬においてはたんぱく質が過剰になるケースは少ないものの、過剰になった場合は肥満はもちろん、腎臓や肝臓疾患の原因になりえます。
既に腎臓や肝臓、ストルバイト結石などの疾患がある犬に関しては、食事中のたんぱく質が過剰にならないよう特に注意が必要です。
たんぱく質食材の選び方
犬の手作りご飯で使用するたんぱく質源となる食材に関しては、アミノ酸スコアを確認してから選ぶと良いでしょう。
アミノ酸スコアとは、人における必須アミノ酸バランスを配慮して100を上限として示すたんぱく質の評価基準で、質の良いたんぱく質に配慮したい場合にこの数値を基準に食材を選ぶことができます。
例えば、卵や肉で考えると以下がアミノ酸スコア100のたんぱく質材料の一例となります。
アミノ酸スコアは、人の必須アミノ酸9種類を基準としているので、犬の場合はこのアミノ酸スコアに加えて、アルギニンの含有量に関しても配慮すると良いでしょう。
鶏卵 アミノ酸スコア100 + アルギニン含む
鶏肉 アミノ酸スコア100 + アルギニン含む
牛肉 アミノ酸スコア100 + アルギニン含む
馬肉 アミノ酸スコア100 + アルギニン含む
アミノ酸スコアが高いたんぱく質源は、消化吸収率も高いといわれています。
なお先述でも説明しましたが、犬において必要となるアルギニンに関しては、大抵のたんぱく質食材に含まれています。
動物性タンパク質を補給するために様々な材料を使おう!
今回は、犬の手作りご飯で必要となる栄養素である「たんぱく質」についてご紹介致しました。
犬の手作りご飯を作るときは、アミノ酸スコアとアルギニンの含有量に配慮して様々な動物性たんぱく質食材を取り入れることをおすすめします。
参考文献
・(獣医師)藤本愛彦,犬の管理栄養士,一般社団法人全日本動物専門教育協会,2018.
・奈良なぎさ,犬と猫の栄養学,緑書房,2016.
・阿部又信,動物看護のための小動物栄養学,株式会社ファームプレス,2008.