犬の「がん」の告知や余命宣告は、飼い主にとってあまりに辛く精神的に耐え難いものです。
私も今は亡き愛犬バーニーズマウンテンドッグのがん告知や余命宣告を2度経験。
生きている心地がしないような辛い時期もありました。
しかし、たとえ残り僅かな時間だとしても、飼い主の意識の変え方次第で愛犬を幸せにできることは確かなことです。
今回は、愛犬のがんと向き合った約3年半で経験した体験談を踏まえ、がんの犬のために飼い主ができることについてご紹介致します。
がんの犬のためにできること|精神
飼い主の不幸は犬に伝染する
がん告知や余命宣告を受けると、当たり前のことですが飼い主は非常に落ち込みます。
私なんかは、頭が真っ白になり獣医師の言葉が耳に入って来ず、立っていることさえできませんでした。
しかし、犬は人(特に大好きな飼い主)の感情を敏感に感じ取ります。
飼い主が悲しい・辛い・苦しいなどのネガティブな感情を抱いていると、それらはほぼ全て繊細な心を持つ犬に伝染します。
私たち飼い主が不幸だと犬も不幸になってしまうのです。
愛犬の幸せのために自分が幸せになる
そこで大切なことは、飼い主が自身の精神的コントロールを心がけることです。
重く圧し掛かる余命宣告の言葉は無理にでも追い出さないと、どんどん頭の中で大きくなってしまいます。
私も泣き崩れたときもあり、このような状況下で前向きになるのは決して簡単なことではありません。
しかし、せめて愛犬の傍にいるときは幸せでいなければいけない。残り僅かであっても傍にいること、傍にいてもらえることに感謝しなければいけないと感じます。
たった今、目の前で必死に生きている愛犬を幸せにしなければいけません。だから、愛犬が幸せでいるためには、飼い主が幸せでいなければいけないということを頭の片隅に置いておいて欲しいのです。
がんの犬のためにできること|医療
医療の選択をするのは飼い主
愛犬ががんになっても、当たり前のことですが獣医師免許を持っていない飼い主には治療を施してあげることはできません。
しかし、最終的に医療の選択をするのは飼い主です。
外科手術で腫瘍を摘出するのか、抗がん剤治療(化学療法)や放射線療法を行うのか。緩和ケアにするのか…。
私の場合は、1度目の血管肉腫のときは摘出手術のみ選択しました。
2度目の組織球肉腫のときは摘出手術後に抗がん剤を短期間利用したが、緩和ケアに移行。
愛犬が病院嫌いなことから飲み薬の抗がん剤を使用したが、がんの転移状況と副作用の関係で獣医師に相談して短期間で断念しました。
医療の選択に関しては、飼い主に重く責任が圧し掛かるような気がしてしまいますが、愛犬が幸せな余生を過ごすために考えた飼い主の選択が一番です。
どんな選択をしても多かれ少なかれ必ず残る後悔。
ならば、愛犬が少しでも幸せな余生を過ごすためにはどんな選択ができるのかを考えれば答えがでるのではないでしょうか。
医療技術だけでなく相談できる獣医師
近年では、セカンドオピニオン外来を受け付けている動物病院も増えましたが、獣医師の選択は飼い主の自由です。
獣医師を選ぶとき私が一番重要視したことは、医療技術もさることながら相談できる獣医師であるか否かでした。
私の場合、1度目に愛犬のがん告知を受けた動物病院で「がんですね。抗がん剤治療も考えた方が良いですね」と素っ気なく言われ、詳しい説明や今後の医療の選択に関しての説明がなかったのでセカンドオピニオン外来に行くことにしました。
結果、動物先端医療を行っている病院で腫瘍科を専門とする相談できる獣医師に出会うことができました。
愛犬のがんと向き合っていく中で、専門性もさることながら獣医師の人間性や言葉にどれほど救われたか分かりません。
獣医師はカウンセラーではないので、飼い主の心理的相談をするべきではありません。
しかし、ただでさえ愛犬のがん告知や余命宣告で不安が多い中、専門的だけど分かりやすい医療説明をしてくれ、その犬の状況(がんの部位や種類、進行度合いなど)や性格に配慮した医療を提案してくれる獣医師は非常に心強いものです。
獣医師からもらえる情報量が多ければ多いほど、抗がん剤1つにしてもなんにしても私たち飼い主の選択肢が広がります。
セカンドオピニオン外来は、なにも飼い主の身勝手で動物病院をころころと変えるためのものではありません。
獣医師の人間性や医療方針、医療技術などを総合的に評価して自分と愛犬の状況に合った動物病院を選択することが大切です。
がんの情報を可能な限り入手する
がん告知や余命宣告はそれほど頻繁にされるものではありませんので、多くの飼い主はこのような状況下におかれたとき、自分がこれから愛犬のために何をすべきかが分かりません。
私も精神的混乱とがん治療に関する知識のなさから、右も左も分からない状況に追い込まれました。
そこで考えたのが、犬のがんについての情報入手をすることでした。
自分に少しでもがんの知識があれば、愛犬の幸せな余生のために役立つかもしれないと考えたからです。
読みなれない専門書を愛犬が寝ている間に毎晩読んで、タイトルに「犬のがん」と表記があるものは片っ端から買いあさりました。
心細くなったときは、SNSで愛犬ががんを発症した経験のある方のブログもたくさん拝見させていただきました。
同じ経験をしている飼い主の存在は、とても大きいものです。
この時期には数えきれない本を読みましたが、医療系の本は獣医師の説明に対しての理解度を深めるためには役立ったが、実際に自分が治療できるわけでないのでそれ程は役に立たず…。
愛犬を支えるために必要な飼い主の意識の持ち方だとかやるべきこと、知っておくべきことなどが簡単に理解できる以下のような本が非常に役立ちました。
がんの犬のためにできること|健康
愛犬の精神的な健康維持をサポート
愛犬の精神的な健康を維持してあげるためには、QOLの向上が非常に大切です。
先述でお話した通り、愛犬にストレスフリーの生活を提供してあげるためには、飼い主の精神的な安定は一番大切ですが、愛犬が好きなことで溢れる毎日にしてあげるように工夫することも大切です。
私の愛犬の場合はとにかく人が好きで、ドッグカフェを中心にお出かけも大好きでした。
愛犬が3才半で血管肉腫になってから、亡くなる数日前まではお出かけをして人に会うことを生活の中心においていました。
もちろん、十分な睡眠をとらせて体に負担がかからないような方法で行うことが重要です。
犬によって好きなことは異なり、飼い主と終始家でまったりしているのが好きな犬もいれば、一人でのんびりと過ごす時間が必要な犬もいます。
外で遊ぶのが好きな犬もいれば、外が苦手な犬も。おもちゃ1つとっても噛むものが好きな犬もいれば、頭を使う知育おもちゃが好きな犬もいます。
愛犬が好きなことに関しては飼い主さんが誰より詳しいので、些細なことでも良いので犬が好きなことで溢れる毎日にすることが大切。
飼い主さんによって、仕事があったり金銭的な事情があったりと様々ですので、無理をせずにできる限りの工夫をしてあげれば良いのだと思います。
愛犬の肉体的な健康維持をサポート
がんという大きな病気と闘う愛犬のために、飼い主さんが手術を施したり抗がん剤治療を行うことはできません。
しかし、毎日の食事管理や運動管理、睡眠時間の管理を中心に犬の肉体的健康維持をサポートすることはできます。
私の場合は幸い時間があったので、愛犬の1度目のがん告知から必死で看護学や管理栄養士の勉強をして、手作りご飯を中心にがんと闘うための体づくりをサポートしてきました。
しかし、余命僅かであったり単純に時間がないとそうもいきません。
そんなときは、寝ている間だけでも愛犬が心地が良いよう寝床を工夫したり環境に配慮したりすることはできます。
手作りご飯でなくても、ドッグフードに配慮したり免疫力応援に役立つサプリメントを追加するなど、食の改善もできますし、運動ができる状態であれば体に負担がかかりにくいよう工夫することもできます。
どんな些細なことでも良いので、愛犬をよく観察しながらこうしたら愛犬の体に良いのではないかと考えながら生活環境を整えてあげることが大切です。
今を生きる愛犬に寄り添う生活
愛犬のがん告知や余命宣告は飼い主に重くのしかかり、精神的にも追い込まれます。
しかし、愛犬の余生を幸せにできるのは飼い主さんだけなのではないでしょうか。
愛犬に気づかれなければ何度だって泣いていい。
ただ、犬が悲しまないよう一緒にいるときは自分が幸せでいること、愛犬の気持ちに寄り添って生活をすることがとても大切なのではないでしょうか。
私も愛犬のために、また自分が後悔しないよう愛情溢れる看護・介護をしてきたつもりですが、やはり思い返せば思い返すほど後悔が付きまといます。
こうすれば良かった、ああすれば良かったなんて思うことは、今でも毎日のように…。
しかし、完璧にできなくても愛犬の心と体に寄り添って生活したという事実だけが、唯一の心の支えになっているのだと思います。